法定福利費とは?建設業で必要な知識と計算方法を解説
これまでの業務の中で 「見積書に法定福利費を明記しないといけない」 といった話を聞いたことはありませんか。法定福利費とは、企業が法律に基づいて負担することが義務付けられている社会保険料等の費用を指します。特に建設業界では、近年の制度改正や業界全体の取り組みを背景に、見積書への明記が求められる重要な項目となっています。
本記事では、
- 法定福利費の概要
- 対象となる保険の種類
- 計算方法
- 見積書への記載例
を中心に、実務で押さえておきたいポイントを解説します。
法定福利費とは?
法定福利費の定義
法定福利費とは、法律に基づき事業者が負担することを義務付けられている社会保険料等の費用を指します。具体的には、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料などが該当します。
建設業における法定福利費
建設業界では、技能者の就労環境改善や社会保険未加入対策を目的として、社会保険加入の適正化が進められてきました。見積書に法定福利費を明記することで、
- 社会保険加入に必要な費用を確保できる
- 価格競争の中で法定福利費が削られることを防げる
といった効果が期待されており、現在は業界全体でその取り組みが推進されています。
法定福利費の対象保険の種類
法定福利費には以下のような保険が含まれます。 なお、保険料率は地域・年齢・業種によって異なるため、以下の表はモデルケースの1つとしてご確認ください。

※記事執筆時点の数値です。最新情報は必ず各外部サイトをご確認ください。
健康保険
会社に勤務する従業員とその家族が加入する保険制度です。病気やケガといった不測の事態に備えるための制度で、保険料率は加入する保険や地域によって異なります。
介護保険
40歳以上の被保険者が加入する保険制度です。65歳以上で要介護認定を受けた場合、または40〜64歳で特定疾病により介護が必要となった場合に、介護サービスを受けることができます。保険料率は制度改正等により見直されることがあり、執筆時点では全国健康保険協会における一般被保険者の保険料率は、現在1.59%とされています。
厚生年金保険
会社に勤務する従業員が加入する公的年金制度です。執筆時点では18.3%とされており、事業主と被保険者で折半して負担します。
子ども・子育て拠出金
子ども支援や子育て支援事業の運営を目的として、事業主が負担する制度です。執筆時点では拠出金率は0.36%とされています。
雇用保険
失業や休業時などに給付される保険制度です。保険料率は業種ごとに異なり、建設業では執筆時点で
- 労働者負担:0.65%
- 事業主負担:1.1%
- 合計:1.75%
とされています。
労災保険
労働者が業務上のケガや疾病を負った際に給付される保険制度です。保険料率は業種ごとに定められており、建設業の中でも事業内容によって細分化されています。
法定福利費と福利厚生費の違い
「法定福利費」と「法定外福利費」は、いずれも福利厚生費に含まれますが、その性質は異なります。
法定福利費
法律により事業者の負担が義務付けられている費用です。本記事で解説している各種社会保険料が該当します。
法定外福利費
従業員の満足度向上や働きやすさを目的として、企業が任意で支給・提供する費用です。住宅手当や通勤手当、各種福利厚生サービスなどが該当します。
法定福利費を明示した見積書の作成手順
法定福利費の算出方法
法定福利費は、一般的に「労務費に一定の保険料率を乗じて算出する」という考え方が用いられます。
また、工事内容が比較的定型的で、過去の実績から平均的な法定福利費の割合を把握できている場合は、以下のような簡便的な算出方法が用いられることもあります。
法定福利費=工事費×工事費当たりの平均的な法定福利費の割合
法定福利費=工事数量×数量当たりの平均的な法定福利費
見積書作成の手順と注意点
見積書に記載する法定福利費は、原則として以下の事業主負担分が対象となります。
- 健康保険料
- 介護保険料
- 厚生年金保険料
- 子ども・子育て拠出金
- 雇用保険料
の会社負担分になります。
計算例
※以下の計算例は、法定福利費の考え方を理解するための簡易的なモデルケースです。
実際の金額や適用される保険料率は、個別の加入状況や条件により異なります。
条件
- 税別見積金額:100万円
- 労務費総額:30万円
1.労務費の算出
工事に必要な人数や賃金から、労務費総額を算出します。 今回は30万円とします。
2.保険料率を掛け、法定福利費を算出
1で算出した労務費を元に法定福利費を算出します。今回は労務費30万円にそれぞれの保険料率を掛けていきます。この時の値は会社負担分を使用します。
- 健康保険料:
300,000×5.75%=17,250 - 介護保険料:
300,000×0.795%=2,385 - 厚生年金保険料:
300,000×9.15%=27,450 - 子ども・子育て拠出金
300,000×0.36%=1,080 - 雇用保険料:
300,000×1.1%=3,300 - 合計:51,465
3.見積書に反映
法定福利費を明記し、
100万円 + 51,465円 = 1,051,465円(税別)
が反映後の見積金額となります。
このとき、法定福利費も消費税の課税対象となります。
法定福利費の見積書記載をめぐる最近の動き
最近の法改正とその影響
令和7年12月12日より施行された「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」により、公共工事においては「適正な施工を確保するために不可欠な経費」の内訳明示が求められることとなりました。その経費の項目の中には法定福利費も含まれています。
今後は、法定福利費を算出・明示する必要性が、これまで以上に高まることが想定されます。
元請け業者と下請け業者の注意点
元請け業者
下請け業者に対し、法定福利費を明記した見積書の提出を求めるとともに、その内容が適切か確認することが重要になります。
下請け業者
見積書作成時には法定福利費を明確に記載し、使用する保険料率が最新のものであるかを随時確認しましょう。
法定福利費の計算の注意点
計算ミスにつながるポイント
法定福利費は消費税の対象になる
企業が国へ直接納付する法定福利費は非課税ですが、見積書に記載する法定福利費は、元請・下請間の取引において工事の対価を構成する一部として扱われます。
そのため、労務費や外注費と同様に、消費税の課税対象となります。
法定福利費を明記した見積書を提出する際は、消費税の扱いにご注意ください。
労務費や工事費の算出根拠が不明確なまま計算してしまう
原価計算や労務費管理を適切に行うことで、計算ミスを防ぎやすくなります。
ミスを防ぐための対策
複数人でチェックをする
見積書の内容は自社の信用にも関わってきます。必要に応じて複数人で内容のチェックを行ってください。
システムを導入し、各値を正確に計算する
法定福利費の計算機能を搭載しているシステムを利用することで正確な計算とその根拠をわかりやすく管理することができます。
こうした機能を備えたツールの一例として、Goolipでは原価計算や法定福利費の自動計算、見積書への反映を行う仕組みを提供しています。
まとめ
建設業界全体の流れとして、法定福利費はこれまで以上に重要視されています。取引先との見積書のやり取りを円滑に進めるためにも、ぜひ一度、自社の条件に当てはめて法定福利費の計算を行ってみてください。


