建設業法改正(2025年)の内容を解説!

建設業法改正2025年:持続可能な建設業界への転換点
2025年に全面施行される建設業法等の改正は、建設業界にとって大きな転換点となります。少子高齢化による人材不足、長時間労働、資材価格の高騰など、業界が抱える構造的課題に対し、国は法制度の抜本的な見直しを行いました。今回の改正は、労働者の処遇改善、働き方改革、生産性向上を柱とし、建設業の担い手確保と持続可能な事業環境の整備を目的としています。
■ 改正の背景:深刻化する業界課題
建設業界では、1997年に685万人だった就業者数が2023年には483万人まで減少。特に技能者の減少が顕著で、55歳以上が36.6%、29歳以下はわずか11.6%と高齢化が進行しています。
若年層の離職理由には「休めない」「賃金が低い」が挙げられ、年間出勤日数は全産業平均より11日多く、労働時間も62時間長いという過酷な労働環境が背景にあります。
さらに、資材価格の高騰が労務費を圧迫し、適正な賃金支払いが困難になるケースも増加。中小企業や下請け企業では、発注者からの短納期要求に応えるため、長時間労働が常態化している現状もあります。
■ 改正の3本柱と施行スケジュール
今回の法改正は、以下の3つの柱で構成されています。
- 労働者の処遇改善(2024年6月13日施行)
- 資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止(2024年12月13日施行)
- 働き方改革と生産性向上(2025年12月施行予定)
これらは段階的に施行され、2025年末までに全面的な法改正が完了する予定です。
■ 労働者の処遇改善:賃金と待遇の底上げ
処遇改善に関する改正では、以下の措置が導入されました。
- 処遇確保の努力義務化:建設業者は労働者の技能や経験を公正に評価し、それに見合った適正な賃金を支払うよう努めることが法的に求められるようになりました。これは単なる努力義務にとどまらず、企業の評価基準や人事制度の見直しを促す契機となっています。
- 標準労務費の勧告制度:国土交通省の中央建設業審議会が、業種や地域ごとの標準的な労務費を算定し、業界に対して勧告できる仕組みが整備されました。これにより、発注者・元請企業が適正な見積もりを行いやすくなり、下請企業や技能者へのしわ寄せを防ぐ効果が期待されています。
- 原価割れ契約の禁止:従来は、受注者側が過度な価格競争に巻き込まれ、労務費を削って契約を成立させるケースが少なくありませんでしたが、今回の改正により、著しく低い金額での契約締結が禁止され、受注者にも契約金額の妥当性を確保する責任が課されました。
これらの制度改正を通じて、建設業界では労働者が安心して働ける環境の整備が進みつつあります。特に若年層にとっては、将来性のある職業としての魅力が高まり、技能継承や人材育成の基盤強化につながると期待されています。企業にとっても、処遇改善は単なるコスト増ではなく、長期的な人材確保と品質向上への投資と捉えるべきでしょう。
■ 資材高騰への対応:リスク共有と契約の柔軟化
資材価格の高騰に伴う労務費圧迫を防ぐため、以下の改正が行われました。
- リスク情報の提供義務化:受注者は、資材価格変動などのリスク情報を注文者に提供する義務を負います。
- 契約変更の明文化:契約書に、請負代金の変更方法を明記することが義務付けられました。
- 変更協議への誠実対応義務:注文者は、資材高騰時の変更協議に誠実に応じる義務を負います。
これにより、資材価格の変動リスクを一方的に受注者が負担する構造が是正され、適正な労務費の確保が可能になります。
■ 働き方改革と生産性向上:現場管理の効率化
2025年施行予定の改正では、働き方改革と生産性向上に向けた以下の措置が導入されます。
- 著しく短い工期契約の禁止:発注者・受注者双方に対し、過度に短い工期での契約締結を禁止。
- 現場技術者の専任義務の合理化:ICT活用を条件に、技術者の専任義務を一部緩和。
- 施工体制台帳の提出義務の合理化:公共工事発注者に対する提出義務が緩和されます。
- ICT活用の努力義務化:効率的な現場管理のため、ICT導入が努力義務として規定されます。
これらの施策により、現場の負担軽減と業務効率化が進み、長時間労働の是正と若年層の定着が期待されます。
■ 監視体制の強化:「建設Gメン」による現場調査
改正法では、違反行為の監視体制も強化されました。国土交通省が設置する「建設Gメン」が現場調査を行い、違反が確認された場合は勧告・公表・改善指導などの措置が取られます。これにより、法令遵守の徹底と業界全体の健全化が図られます。
■ まとめ:建設業界の未来を支える法改正
今回の建設業法改正は、単なる法制度の変更ではなく、建設業界の持続可能性を高めるための包括的な改革です。労働者の処遇改善、資材高騰への対応、働き方改革を通じて、若年層の参入促進と技能継承を支援し、地域インフラの担い手としての建設業の役割を強化することが期待されています。
企業にとっては、契約書の見直し、労務費の適正化、ICT導入など、実務対応が求められる場面も多くなります。今後の法令施行に向けて、早期の準備と社内体制の整備が重要です。
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