建設業法について

※上記の画像は、法律をイメージしたものです
建設業法とは?
建設業法は、建設業者の資質向上や建設工事請負契約の適正化を目的とした法律です。この法律は、建設工事の適正な施工を確保し、発注者および下請け業者を保護するために制定されました。具体的には、建設業者が国土交通大臣または都道府県知事の許可を受けることを義務付け、各種規制を遵守することを求めています。
建設業許可申請の手続きについて
1. 建設業許可申請を取得するメリット
建設業許可を取得することには多くのメリットがあります。まず、大規模な工事の受注が可能になります。具体的には、500万円以上の工事(建築一式工事の場合は1,500万円以上)を請け負うことができるようになります。また、公共工事への参入も可能となり、企業の信用力が向上します。これにより、銀行からの融資を受けやすくなったり、取引先との関係が円滑になるなどのメリットも期待できます。
例)こんな場合は?
材料提供 200万円 + 工事請負金額 300万円 =今回の工事金額(?)
材料の200万円と工事請負金額の300万円とを今回の工事請負金額として合算することになります。材料に関しては請負金額に含む必要がありますが、工事をするために必要な機械代等は含みませんのでご注意ください。
参考:軽微な建設工事とは、
1)建築一式工事は1件の請負金額が1,500万円未満(税込)、もしくは木造住宅で延べ面積150㎡未満の工事
2)建築一式工事以外の工事は、1件の請負金額が500万未満(税込)の工事
のことをいう。
2. 大臣許可と知事許可の違い
建設業許可には「大臣許可」と「知事許可」の2種類があります。大臣許可は、2つ以上の都道府県に営業所を設ける場合に必要です。一方、知事許可は、1つの都道府県内にのみ営業所を設ける場合に必要です 。この違いは、営業所の数と所在地によって決まります。
:県外の仕事を請け負いたいけど、大臣許可が必要?
必要ありません。建設業法上は、請負工事の場所を定めているわけではないので、知事許可でも県外の請負工事をすることは可能です。
ただし、請負契約は許可を取っている事務所(本社・営業所)で行う必要があるのでご注意ください。
3. 申請の方法
建設業許可の申請手順は以下の通りです :
①取りたい許可の種類を決める:
知事許可か大臣許可か、一般建設業か特定建設業かを決定します。
②許可条件を満たしているか確認:
経営業務の管理能力、専任技術者の配置、誠実性、財産的基礎、欠格要件、社会保険の加入状況を確認します。
③申請書類の作成と提出:
必要な書類を収集し、申請書を作成して提出します。
④手数料の支払い:
許可申請時に必要な手数料を支払います。
⑤審査と許可通知:
提出された書類が審査され、問題がなければ許可が発行されます。
⑥建設業許可を取得することで、企業の信頼性が向上し、より大規模な工事の受注や公共工事への参入が可能になります。これにより、事業の成長と安定が期待できます。
建設業許可の要件
会社員等を辞めてすぐに起業することができるのか、誰でも簡単に許可を得ることができるのかということが気になる人も多いと思います。
その辺りも含みながら少し掘り下げて、建設業許可の要件を確認してみましょう。
【建設業許可の要件】
①経営能力があること(経営業務の管理責任者がいる)
②技術力があること(営業所ごとに専任の技術者がいる)
③誠実であること(請負契約に関して誠実であり、又は不正のおそれがない)
④財産力があること(請負契約を履行するための資力がある)
となります。
これらは、建設業許可を受けるための要件となりますが、逆に権利を失う欠格要件も建設業法8条には定められています。
これらの欠格要件に該当すると、建設業の許可を新たに取得することができず、既に取得している場合でも取り消される可能性があります。特に公共工事などでは、信用が重視されるため、欠格要件に該当することは重大な問題となります。
この要件は、建設業の許可を維持する要件でもありますので、内容を正しく理解し、業務を行っていくように努めていく必要があります。
では、①の要件である経営業務の管理責任者とはどのような人なのかを考えてみましょう。
■ 経営業務の管理責任者とは?
経営業務の管理責任者とは、建設業の経営に関する実務経験を有し、企業の経営を適切に行う能力を持つ人物のことです。建設業は一品受注生産であり、資金調達・人材配置・下請契約など多岐にわたる業務を伴うため、経営の安定性が極めて重要とされています。
■ なぜ必要なのか?
建設業は、契約金額が大きく、工期も長期にわたることが多いため、経営の安定性が発注者や下請業者にとっても重要です。経営業務の管理責任者を設けることで、以下のような効果が期待されます。
- 不良・不適格業者の排除
- ペーパーカンパニーの防止
- 発注者保護と工事の適正な遂行
■ 今後の動向と課題
近年では、企業のガバナンス体制の変化や兼業企業の増加により、「経管要件が過度な負担になっている」との声もあります。一方で、建設業の特性を踏まえれば、経管の存在は依然として重要です。
国土交通省では、要件の合理化や柔軟な運用の検討も進めており、今後の制度改正にも注目が集まっています。
経営業務の管理責任者は、建設業許可の取得・維持において欠かせない存在です。要件を満たす人材の確保は、企業の信頼性や競争力にも直結します。建設業界での事業展開を考えるなら、まずは「経管」の要件をしっかり理解することが第一歩になるでしょう。
次に、②の技術力があること(営業所ごとに専任の技術者がいる)についても見ていきます。
■ 専任技術者とは?
「専任技術者」とは、建設業の営業所に常勤し、技術的な管理を担う責任者のことです。建設工事の品質確保や安全管理の観点から、営業所ごとに1名以上の専任技術者を置くことが義務付けられています。
■ 専任技術者の役割
専任技術者は、単なる名義人ではなく、以下のような重要な役割を担います:
- 工事の技術的な指導・監督
- 工事計画の立案と施工体制の整備
- 発注者や下請業者との技術的な調整
- 品質・安全・工程管理の実施
■ 最近の法改正と柔軟化
2024年~2025年にかけての法改正により、専任技術者の現場兼任が一部可能となるなど、制度の柔軟化が進んでいます。たとえば、一定の条件を満たせば、営業所の専任技術者が現場の主任技術者を兼ねることも可能です。
専任技術者は、建設業許可を取得・維持するための「技術力の証明」となる存在です。資格や経験の要件を満たす人材を確保することは、企業の信頼性や競争力にも直結します。
ここまでは、人についての要件を見てきました。次は、企業ガバナンスにも関わる事項として契約について解説していきます。
③誠実であること(請負契約に関して誠実であり、又は不正のおそれがない)とはどういうことなのか?
■ 「誠実であること」とは?
建設業法第7条第3号に定められているこの要件は、請負契約の締結や履行に関して、誠実な対応ができることを意味します。つまり、契約に関して不正や不誠実な行為を行うおそれがある者には、建設業の許可は与えられないという考え方です。
■ どのような場合に「誠実でない」と判断されるのか?
以下のような行為があると、「誠実でない」と判断され、許可が下りない、または取り消される可能性があります。
- 虚偽の契約書を作成した
- 工事代金の未払い・遅延が常態化している
- 下請業者への不当な圧力や代金の減額
- 工事の手抜きや仕様違反
- 公共工事での談合や入札妨害行為
- 社会保険未加入や労働法違反の常習
これらは、企業の信用を著しく損なう行為であり、建設業界全体の信頼性にも影響を与えます。
■ 「誠実性」の判断対象となるのは誰?
この要件は、法人であれば役員全員、個人事業主であれば本人および支配人が対象となります。つまり、経営陣の中に一人でも不誠実な行為歴がある者がいれば、許可が下りない可能性があります。
■ 企業としての対応策
「誠実であること」を証明するためには、以下のような取り組みが有効です。
- 契約書の適正な作成と保管
- 下請業者との公正な取引
- 労働法令・社会保険の遵守
- 社内コンプライアンス体制の整備
- 過去のトラブルの記録と改善策の提示
また、過去に不正があった場合でも、改善措置を講じていることを示すことで、一定の評価を得られる場合もあります。
ここで、「誠実であること」のチェックリストを一覧にしてみました。自己点検ツールとして参考にしてみてください。
【契約・取引の適正性】
- 契約書はすべて書面で作成し、適正に保管している
- 契約内容に虚偽や誤解を招く表現がない
- 下請業者との契約条件は公正で、強制的な値引きや不当な変更をしていない
- 工事代金の支払いは契約通りに行っている
【法令遵守】
- 労働基準法、建設業法、下請法などの関連法令を遵守している
- 社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)に適切に加入している
- 公共工事において談合や入札妨害などの不正行為を行っていない
【工事の品質・安全】
- 工事は契約通りの仕様・品質で実施している
- 手抜き工事や仕様違反が発生した場合、速やかに是正している
- 安全管理体制が整備されており、事故防止に努めている
【社内体制・ガバナンス】
- コンプライアンスに関する社内規程や研修制度がある
- 不正行為が発覚した場合の内部通報制度や対応フローが整備されている
- 役員・管理職に過去の不正行為歴(ハラスメントも他者に対する不法行為として対象となります。)がない
「誠実であること」は、建設業許可の取得・維持において見逃せない要件です。単に法令を守るだけでなく、取引先や社会から信頼される企業であることが求められます。建設業界での長期的な成長を目指すなら、誠実性の確保と継続的な改善が不可欠です。
建設業許可の要件「財産力があること」とは?資力の証明方法と実務ポイントを解説
■ 財産力の要件とは?
建設業法第7条第4号に基づき、建設業者は「請負契約を履行するに足る財産的基礎または金銭的信用を有すること」が求められます。これは、工事の途中で資金が尽きて工事が中断するような事態を防ぐための制度です。
■ 一般建設業と特定建設業で異なる基準
【一般建設業】
以下のいずれかを満たせばOKです。
1.自己資本が500万円以上あること
・法人:貸借対照表の「純資産の部」で確認
・個人:確定申告書などから自己資本を算出
2.500万円以上の資金調達能力があること
・銀行の残高証明書などで証明(申請日から1か月以内のもの)
【特定建設業】
より厳格な基準が設けられています。
- 資本金:2,000万円以上
- 自己資本:4,000万円以上
- 欠損額が資本金の20%以内
- 流動比率が75%以上
これらは、下請契約の金額が大きくなるため、元請としての経済的責任を果たせるかどうかを重視した基準です。
■ 証明書類の例
- 決算書(直近の税務申告済みのもの)
- 銀行の残高証明書
- 資金調達に関する契約書や融資証明書
■ よくある誤解と注意点
- 「現金で500万円が必要」と誤解されがちですが、自己資本や資金調達能力でも可です。
- 「資本金が500万円必要」ではなく、純資産(自己資本)で判断されます。
- 「見せ金」などの不正な資金調達は、発覚すれば許可取消のリスクがあります。
「財産力があること」は、建設業者としての信頼性と責任能力を示す重要な要件です。特に公共工事や大規模案件を受注するには、しっかりとした財務基盤が求められます。許可取得や更新をスムーズに進めるためにも、日頃から財務状況の健全化と透明性の確保に努めましょう。
まとめ
このように、建設業許可を取得するには、抑えておかないといけない4つのポイント(経営経験者の配置、専任技術者の常駐、誠実な契約履行体制、そして500万円以上の資金力)があります。それに加え、冒頭でも紹介した欠格要件にも触れないように事業を維持する努力も必要になってきます。
健全な経営を実現するためには、書類管理などを電子化していつでも可視化しておく必要があります。
当社で扱っている「Goolip」サービスを活用すれば、コスト管理に必要な伝票作成(見積書や請求書)も簡単に管理できます!
無料トライアルでお試しも可能なので、是非、この機会に登録をお願いします!
参考:JCIPをご存じですか?
JCIP(Japan Construction Industry Program)は、建設業許可や経営事項審査の電子申請を行うためのシステムです。このシステムは、建設業者が必要な許可や審査を効率的に申請できるように設計されています。JCIPは、建設業者にとって非常に便利なツールであり、申請手続きの効率化に大いに役立ちます。電子申請によって様々なメリットがありますので、利用をお勧めします!
URL→国土交通省:建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)
関連リンク:国土交通省 建設許可申請関連記事